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ギター⑤
だから今手元に楽器がなくってもレンタルで楽器を借りられる。
その事を渚沙が潤さんから説明を受けて『なるほど、すごい!』と呟いた。
「そうだな~。俺も今は教える相手がいないし、時間も有り余っているし、ここは渚沙ちゃんの提案に乗るかぁ~湊斗」
「はい。あっ、そしたら渚沙が暇になるんじゃあ~」
「私は大丈夫。湊斗の練習見ているから」
「……分かった、ありがとう。午前も行ったけどファミレスに帰りも寄ろう」
「別にいいのに」
「何だ、やっぱりデート? 午前もファミレスに行ったって」
「違います。今日は高校の入学式で帰りが早いんです!」
「へぇー。あっ、じゃあ、二人とも今日が入学式だったの?」
「そうです。私と湊斗は晴れて高校生になりました!」
「早いなぁ~」
「……潤さん。年寄り臭いですよ。その暴言……」
「おっと。それはまずいなぁ~。まだ若いから。じゃあ、湊斗やっていく方向でいいんだな?」
「あっ、はい。お願いします」
「ちょっと待ってて」
潤さんがカウンターの電話を取って話し込んでいる間に俺は渚沙に話し掛けた。
「本当にいいのか、渚沙?」
「うん。ギターを弾いている湊斗の姿を見たいし、また、ギターを始めて私は嬉しいよ」
「ありがとう、渚沙」
渚沙も俺がギターをやっていた事は知っている。練習であるが、何回か兄さんに教わった事を渚沙の前で演奏したもんだ。
懐かしく感じるが。
「もう少しだけ待ってもらってもいいか、湊斗。小林が来るまで」
「はい。小林さん?」
「交代するのに。誰もいないじゃあまずいだろ」
「あ~あ。そうですね」
小林さんが来るまで二、三分もかからずに二階にやって来た。
「お待たせしました、オーナー」
「悪いなぁ~無理を言って」
「いいえ、大丈夫ッス。丁度、雪村さんが休憩から帰ってきたのでレジをお願いしたので」
「分かった」
「小林さん、何かすみません」
「湊斗君はお客様なんだから気にしない。でも、湊斗君ギター弾けるんだね、カッコいい~」
「下手くそですよ?」
「そんなことないくせに。あとで聴かせてほしいなぁ~」
「はい。機会があれば」
「楽しみにしているよ。楽器のメンテナンスなら僕に任せて!」
「そうだな。小林のメンテナンスはピカイチだから楽器の不具合があったら頼むといいぞ、湊斗」
「はい。その時はよろしくお願いします」
「任せてよ!」
「じゃあ、湊斗と渚沙ちゃん。一緒にEー④スタジオに行こうか」
「「はい」」
俺と渚沙、そして潤さんでスタジオに向かう。
「小林、何かあったら内線で。時間は今からだと十五分ぐらいかな。次の予約者が来たら内線してくれ」
「分かりました」
ここのスタジオは全部で八つ部屋がある。それをアルファベットと数字で認識している。例えば、Aー①と。分かりやすいし、たくさんあるのはありがたいと思う。
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