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絵は、宮殿で描かなくてはいけないという決まりはなかったので、
おのおの、自分の家で時間をかけて描くか、
多くの候補者の場合は、自分で描いてもいい絵が描けない、と
絵かきに金品を送り、美男子を描かせた。
だが、一人だけは違った。
前王が生きていた頃に、実質人質のような扱いで外国から連れてこられ、
宮殿に住むことになった姫である。
暮らしに困ることはなかったが、あまり良い地位だとは言えず、
贅沢ができなかったため服装は地味で、
他の候補者には鼻で笑われるような存在だった。
普段は、侍女でさえも国から連れてきた一人のみ。
出身国の父の命令でお后候補になった。
「よおーし…。これが輪郭で、鼻で、あとは目ね!チョン、チョンっと!」
「お嬢様!!あまりにも適当ではありませんか!?
もう少していねいに!!」
「なぜ?わたしは、跡継ぎの問題とか面倒なことに巻き込まれたくないし、
どんな人かもわからない王に取り入るよりも、
このまま影を薄ーく保って、1人で自由に生きていきたいのよ。」
「ですが、ここまで下手くそ…、と申しますか、めちゃくちゃに描いておいて、もし罪にでも問われたりしたら…。」
「その時はその時よ。一生束縛されるよりいいかもしれない。」
「お嬢様…。」
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