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夜になった。
式のあとは宴会や、王族たちへの挨拶を、男女で別れて行う形であったので、
新しい王と后はまだ近くで顔を合わせていない。
王は緊張していた。
避けていたこともあり、母上様以外の女性と会うことがなかったため、上手く話せるか不安に思えてきた。
「もし后がここに来たら教えてくれ。」
と言い、ベッドに座り、カーテンに隠れた。
そんな時、
「お后様が来られたようです。」
扉の近くの一人が言う。
カコン、カコン、…。
ヒールで歩く音が響く。
「王様…。参りました。后でございます。」
おそるおそるカーテンの隙間から姿を覗く。
すると、想定外の美貌を持つ女性が立っている。
汗をダラダラ流す王。
こっそり側近に
「この者で間違いないのか?」と確かめる。
「間違いないはずですが…。」
側近たちまでもがあの絵からは考えられない、その美しさに驚いている。
「どうなさいますか?そのまま帰すのもよくないと思いますが。」
その言葉に納得した王は、
「とりあえず、朝まではそこにいるように。椅子などを準備させよう。」
と、遠くから后に声をかける。
「あの、何もなさらないのでしょうか。」
「……。」
「なぜあんな絵を描いた私をお選びに?」
「それは…。」
気になった后は、近くに行って話を聞こうとする。
ずっと顔を見せないことも気になる。
カコン、カコン、…。
「や、やめろ。来ない…で…。」
遅かった。
「どうかお顔をお見せください。開けてもよろしいでしょうか?」
「……。」
シャ。
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