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ヤバい。兄さんに殺される。僕の焦りは、久しぶりに最高点を記録する勢いで膨れ上がっていた。
手汗が止めどなく滲み、背中や腹あたりからの冷や汗を白衣が吸って気持ち悪い。でもそんなのがどうでもよくなるぐらいに、脳裏によぎる烈火の如き怒りが僕の背を連打してくる。
兄さんたちとは専用の霊子通信回路を通じて意識が繋がっているので、兄さんたちが受け取った感覚情報は、痛覚以外全て僕に集約される。
厳密には僕が創った霊子コンピュータ―――ネヴァー・ハウスに集積されるのだが、霊子通信回線を経て兄さんから送られてくる情報は、その九割以上が猛烈な悔しさからくる怒りであった。
もはやそれは激昂に等しく、あの短気を絵に描いたような兄さんにしては、冷静に御玲と話せているのが不思議なくらい表面上はおとなしい。
今の兄さんは、いつ爆発してもおかしくない核弾頭そのもの。ほんの少し刺激を与えれば即座に爆発してしまうほどに、今の兄さんの精神状態は、酷く不安定な状態にあった。
「ヤバい……ブチのめされる程度で済むかなぁ……」
もはやその時点でおかしい気がするが、僕たち流川兄弟にとって、``ブチのめす``は``ブチ殺す``よりマシな処刑であることを意味する。
マジギレした兄さんなど災禍そのものだ。全身打撲で済めば運が良い方で、大概は気絶しても血まみれになるまでサンドバッグみたく無限に叩きのめされる。
修行中の小競り合いや些細な兄弟喧嘩でこれなんだから、今回みたいな真面目な戦いでポカやらかしたとなれば、叩きのめされるだけじゃ飽き足らず、八つ裂きにされる可能性すら余裕であり得る。生き残れる気がしなかった。
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