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だが同時に、僕の存在は世界から秘匿された。
僕の存在そのものが、いわば世界を根底から変えてしまう技術力そのものだ。環境と僕の二つが揃うだけで、世界の全てを手に入れられる力を手にできる。
そうなれば、色んな奴から命を狙われる。下手に外に出れば、誘拐されてしまう可能性があった。誘拐されれば抵抗する力を持たない僕なんて、されるがままだ。
流川のために自害するか、言いなりになるかの二択しかないだろう。
だから僕は自分の才能と引き換えに、外の世界とは隔絶して生きる道を選んだのだ。その決断に後悔はしていない。僕は研究さえできるのなら、好きなことさえできるのなら、人とのつながりも外の世界との繋がりも、全部要らなかったから―――。
でも、やはり人との繋がりがないというのは張り合いがないものだ。
退屈ではないが、時々刺激的な何かが欲しくなる。ずっと研究施設に引きこもっていると、どうしても刺激不足になりがちだった。
そんなとき丁度いい娯楽として有用だったのが、市販のラブコメの漫画だった。
分家派に頼んで巫市からこっそり買ってもらった漫画たちの中に、ある日突然ひょんなことから出会った謎の出自のヒロインと同棲生活を送ることになり、色んな騒動に巻き込まれながら、主人公と相思相愛になっていくといった作風のものが何作かあった。
そのヒロインは大概宇宙人だったり、異世界から来た何かしらだったりするのだが、中にはアンドロイドもあった。
大体アンドロイド系のヒロインは統計的に悲壮な過去を持っている場合が多く、物語の進行にしたがって、その過去が少しずつ詳らかになっていくのが常だが、その過去を主人公とともに力を合わせて清算し、絆を深めていく物語に僕は強く憧れた。
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