プロローグ:愚弟の理想

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 僕には出会いがない。外に出られず、死ぬまで本家領で過ごすと決めた僕に、異性との出会いは絶望的だ。  大体この手のヒロインは、空から降ってくる、異世界から突然やってくるなどが多いが、こと流川(るせん)本家領において、そんな奇想天外な事態は起こりえない。  まず防空圏に侵入した未確認飛翔体は、久々(ひさひさ)おじさんや僕が創った流川(るせん)本家の防衛システムにより、自前の地対空ミサイルで跡形もなく排除されてしまう。  転移阻止の魔法がかかっているから、異世界から僕の部屋に繋げるなんてこともできない。逆に僕から異世界に繋げるって真似ならできると思うけれど、正直得体のしれない異世界と僕の部屋を繋げるなんて危険極まりないし、怖がりな僕としては、それはそれで気が進まないやり方だった。  ともかく十五年生きてきて、そんな女の子との出会いはない。魔法や霊力、科学の概念があるこの世界なら、ラブコメ漫画みたいなことが起こっても不思議ではないのに、十五年生きてきて一度も起こらないとなると流川(るせん)本家領にいる限り、僕にはあらゆる出会いが絶望的であると理論的に帰結するほかない状況だ。  そうなると話は変わってくる。出会いがないのなら、自らその手のヒロインを創造する、という話へと。  幸い、僕には才能があった。発明するという才能が。出会いに関しては絶望的に恵まれない僕だが、その部分を補うように、僕は思ったものを現実に創り出せる技術力を持っていた。  だったら簡単のことじゃないか。創ればいい、女の子を。自分が理想とする、最高傑作のヒロインを。そう考えれば出会いを待つよりずっと簡単なことだと、すぐに思えたのだ。  でも現実は僕に容赦なく牙をむく。構想を練るだけなら簡単だが、流石の僕でも人間に限りなく近い存在を人為的に創り出すのは難しかった。
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