プロローグ:愚弟の理想

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 まず当然のことながら、この世界に人工生命の創造などという神の如き技術の基礎理論など存在しない。あまりにもオーバーテクノロジーすぎて、夢のような話だからだ。  となると、基礎理論から作る必要があった。  人間に限りなく近い存在、いわば人工生命の創造。ただの魔生物を創り出すのとは次元が違う。意志を持ち、知能を持ち、思想を持ち、人格を持つ生き物。それを創り出すために、流川(るせん)家にあったあらゆる文献を読み漁った。  そこで辿り着いたのが、霊子コンピュータだった。  遥か太古の昔。二千年間続いた``武力統一大戦時代``よりもずっと昔。超古代文明``カンブリア``と呼ばれたその時代に、究極のスーパーコンピュータが存在した。  文明が滅びるきっかけとなった大戦で、その技術は既に失われていた。二千年もの間、その技術を呼び覚ませた者は誰一人いなかったのだ。  流川(るせん)家の文献でも、詳しいことは分からなかった。霊子コンピュータに関する歴史的記述は、そのほとんどが大戦の業火で失われていたからだ。  だがわずかに残った記述の中に、こんな記述があった。  霊子コンピュータを手にした者は、世界の理を知る。それすなわち、世界の法則すら、その手に治められることを意味する。と―――。  そのとき、僕の頭に天啓が下ったような気がした。僕が復活させるしかない。そう思えてならなかったのだ。  僕が世界の法則をその手に治めれば、人工生命の創造も夢じゃない。僕の理想とするヒロインたちを創造できるかもしれない。
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