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その叫びは、あまりに無計画で感情的なものだ。何の考えもないし、意図もない。強いてあるとすれば、奴の標的が金髪野郎から御玲に移るということ。
だからこその牽制を死にかけの金髪野郎を振り解いてでもやろうとしたが、間に合うわけもない。
考えなくても直感で分かるのだ。俺が牽制するよりも、奴が御玲をぶっ殺す方が速いと。
奴の攻撃は目視できない。転移されたら終わりだし、そうでなくとも俺と女アンドロイドとの距離は割と離れていた。転移を使おうと使わなかろうと、俺が御玲を守るために動くより、御玲が無様に死ぬ未来の方がダントツに速い。
そこまで悟っても、だからといって動かないわけにもいかなかった。
「クソが!」
牽制代わりに投げた火の球も空振り。感情的に投げたせいで狙いも定まらず、とんちんかんな方へと飛んでいってしまう。だったら俺が霊力でアイツの位置を動かす。
だが、そんなの今までやったことがない。うまくできなければ御玲は。
「馬鹿が、こんなときに余計な考え事なんざ……!」
本能が訴えかける。そんな暇はないと。考えるよりも早く、体を動かした方が早いと。
そうしないと、御玲は助からないと。
何かに背を押されたような感覚が走り、その瞬間、俺は考えることをやめた。御玲を生かす、ただそれだけに全ての意識を集中させて―――。
「頑張り……すぎだ……新人……」
刹那、御玲をぶっ殺そうと肉薄した女アンドロイドの周りに大量の白い粉みたいなのが降り注いだ。それらは陽の光に当たるや否や、凄まじい輝きを放ち出す。
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