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正直に言った。テンプレすぎでは、と思われるかもしれないが、実際これが本当なのだ。
確かに相手は美女だしアンドロイドだし、決戦前に言われた通りマイマスターとか呼ばれたいなと思っていたけど、それはそれ、これはこれ。相手は敵だし、邪な私情を挟む気は更々なく、作戦通り隙を作るために再度ハッキングを全力で試みていた。
だが、ここで相手が僕の想定を軽く超えてきたのだ。
『聞いて理解してもらえるか分からないけど、あのアンドロイド……兄さんたちと戦ってる間、僕のハッキングに抵抗するために演算領域を割いていたんだ。むしろ、兄さんたちに対してより僕に力を注いでたと言っていい』
『つまり、奴にとって俺らをブチのめすことはただの作業にすぎなかったと』
『う、うーん……そ、うなるか、な』
重要なところはそこじゃないんだけど、それを言ったら地雷だ。面倒くさいことになるので間違っても踏み抜かないように、兄さんたちが戦っていたときの攻防を思い出す。
件の女アンドロイドは、兄さんと戦っている間、演算領域の半分以上をハッキング対策に回していて、兄さんたちとの戦いは以前のデータを再利用―――つまり戦闘経験の反復で乗り切っていた。作業と言われれば、まさしく言葉通りなのだ。
『に、兄さんごめん……』
『ああ? あー……気にすんな。別に怒ってるわけじゃねぇさ』
それは嘘だ。霊子通信回線を介して、今にも暴走寸前の激情がひしひしと伝わってくる。
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