4人が本棚に入れています
本棚に追加
『でもレク・ホーランが……』
『チッ……だから別にお前に怒ってねぇって。そも最悪できなくてもいいって言ってあったろうが。それとあの金髪野郎に関しては忘れろ。友達でも仲間でもねぇのが死んだ。ただそれだけの話だ』
怒りの感情がほんの少し緩んだ。僕は言い知れない重圧が軽くなったのを感じる。
兄さんにしては寛大すぎる処置だが、怒りの矛先はどうやら僕には向いてないらしい。だったらこれ以上気にするのは野暮だ。そういうことにしておこう。
『で、久三男さま。結局のところ、件の女アンドロイドにハッキングとやらはできないということで、よろしいですか?』
サクッと話が切り替えられる。そうだ、兄さんの機嫌を伺うのに必死だったが、重要なのはそこだ。
『いや、できる。ただ時間がかかる……抵抗されてるから中枢を強制的に掌握するのは無理だけど、干渉するくらいなら』
『つーことは、どう足掻いても俺らじゃないとぶっ壊せなくなったってことか』
怒りの濁流が尚も収まってない兄さんだが、やけに冷静な判断に、少しばかり驚く。
当初の作戦だと、僕が彼女の中枢を掌握して無力化するまで、兄さんたちが足止めをするって流れだった。
しかし予想に反して女アンドロイドは優秀だった。僕のハッキングに対応するだけじゃ飽き足らず、兄さんたちまで撃退せしめた。ハッキングに対抗されている今、ただでさえ時間のかかる中枢掌握は、戦略として現実的じゃなくなってしまったのだ。
最初のコメントを投稿しよう!