愚弟、出撃

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『でもレク・ホーランが……』 『チッ……だから別にお前に怒ってねぇって。そも最悪できなくてもいいって言ってあったろうが。それとあの金髪野郎に関しては忘れろ。友達でも仲間でもねぇのが死んだ。ただそれだけの話だ』  怒りの感情がほんの少し緩んだ。僕は言い知れない重圧が軽くなったのを感じる。  兄さんにしては寛大すぎる処置だが、怒りの矛先はどうやら僕には向いてないらしい。だったらこれ以上気にするのは野暮だ。そういうことにしておこう。 『で、久三男(くみお)さま。結局のところ、件の女アンドロイドにハッキングとやらはできないということで、よろしいですか?』  サクッと話が切り替えられる。そうだ、兄さんの機嫌を伺うのに必死だったが、重要なのはそこだ。 『いや、できる。ただ時間がかかる……抵抗されてるから中枢を強制的に掌握するのは無理だけど、干渉するくらいなら』 『つーことは、どう足掻いても俺らじゃないとぶっ壊せなくなったってことか』  怒りの濁流が尚も収まってない兄さんだが、やけに冷静な判断に、少しばかり驚く。  当初の作戦だと、僕が彼女の中枢を掌握して無力化するまで、兄さんたちが足止めをするって流れだった。  しかし予想に反して女アンドロイドは優秀だった。僕のハッキングに対応するだけじゃ飽き足らず、兄さんたちまで撃退せしめた。ハッキングに対抗されている今、ただでさえ時間のかかる中枢掌握は、戦略として現実的じゃなくなってしまったのだ。
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