愚弟、出撃

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 霊子通信ネットワークによって構成された精神世界に割り込む、二名の意識。一つは心底を推し量れない深淵なる常闇。もう一つは陽気だが同じく底を見定めさせない叡智の象徴。  僕のサポートを言い渡されていた、あくのだいまおうとパオングが霊子通信回線によって構築された擬似精神世界に姿を表す。  秘匿回線に割り込むとか普通は無理なんだけどな、とか思いつつも、今は重要じゃないと考えて頭を切り替える。 『出向くって……いや、パオングは分かる。でもあくのだいまおう、アンタは……』  兄さんの顔が、あからさまに歪んだ。気持ちは分からなくもない。  パオングは後衛役として優秀すぎるぐらい魔導師としてズバ抜けているが、あくのだいまおうはいわゆる大賢者ポジション。必要に迫られたとき、必要な知識を与える預言者のような立ち位置にある。 『言いたいことは分かります。私には確かに、前衛として戦う力はない。しかし、何もできないというわけではないのですよ』 『じゃあ何ができるってんだ』 『パオング。まさか貴台、アレを使うつもりではあるまいな?』 『ご明察。今回、相手は軍を率いている。ならば、それを逆手に取れます』 『や、やはりか……』 『お、おい? 一体なんの話をしてる? 軍を率いてるのを逆手に取るってどういうことだ?』  僕を含め、兄さんと御玲(みれい)は完全に置いてけぼりだ。焦らされるのが嫌いな兄さんが堪えられるはずもなく、単刀直入にあくのだいまおうへ意識を寄せる。
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