4人が本棚に入れています
本棚に追加
霊力って便利だな、とちょっと見とれてしまう。今後もこういう場面はあるだろうし、即興で編み出したとはいえ、この小技は使えそうである。
「っ!! そうだ御玲は!?」
霊力で服を直したのも束の間。女アンドロイドに一瞬にして投げ飛ばされた御玲の事を思い出す。
周りには澄連はおろか、金髪野郎やポンチョ女たちの姿もなく、辺りには俺だけしかいない。例えようのない不安が心底からこみ上げてくる。
『大丈夫だよ兄さん。みんな生きてるから。虫の息だけどね』
不安が理性を蝕んでいく中で、愚弟の霊子通信が感情の昂りに蓋をしてくれる。
『……ん? でも待てよ?』
みんな生きている。それで全てを破壊しようと込み上げた激情が一瞬でそよ風へと変わったところまでは良かったが、同時に冷静になってみるとおかしいところが一つある。
御玲が吹っ飛ばされたとき、俺はカチキレて肉体のリミッター解除―――竜人化で爆発的に身体能力を増大させていた。
結果は俺が反撃するよりも速く消し炭にされたわけだが、リミッターを解除した俺を一瞬で塵芥にする力を持っているとなると、それは手加減無しの母さんと同等以上の力を持っているってことであり、言っちゃなんだが御玲程度、木っ端微塵になっていて然るべきだ。
いや、そうなっていたら俺の理性が完全に吹っ飛んでいたから生きていてホントに良かったけど、釈然としないものは釈然としないのである。
『あの、兄さん。そのことなんだけど、というかそのことを含めて現況報告したいんだけど……いま大丈夫?』
俺のモヤモヤを、霊子通信を通して悟ったのか。恐る恐るそんな愚問をわざわざ問いかけてきた。
いや報告してくんねぇと先に進まねぇんだけど、と言いたくなったが、言ってしまうとビビるだろうし、とりあえずここは優しく言うことにする。
最初のコメントを投稿しよう!