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逢魔ヶ時と疾風
「誰かに代わらせなさい」
その日。母は、人生で一度も見たことがないほど険しい表情で疾風を見た。
「こんな理不尽なことはないわ。貴方はこんなところで終わっていい人間じゃない。今からお母さんの言う通りにするのよ、いいわね?」
肩を掴み、血走った眼に涙を浮かべて疾風に訴える。疾風は混乱したまま、ただただ尋ね返すしかなかった。
「一体どういうことだよ、母ちゃん。……なんで」
彼女がここまで怒りを、悲しみを露わにする理由がまったくもって分からない。何故なら。
「俺、あいつと、友達になっただけだぜ?」
何か悪い事をした、心当たりがあるわけでもない。
ただ山の中で、新しい友達ができただけ。
彼と一緒に遊んだだけだというのに。
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