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それから僕は数えきれないほどの面接に落っこちた。
その間も細々とフィギュア作りに明け暮れていた。
好きなことではあったけど、生活できるほどではなかった。
かろうじて雇ってもらえたコンビニでバイトしながら、どうしても諦めきれない夢にしがみついていた。
僕のフィギュアは虫に偏っていて、その中でも相当にマイナーらしい。
結は僕の作る物を、必ず褒めてくれた。
考えてみると、とても理解できない物も多かっただろう。
それでも結は必ずいいところを見つけてくれた。
ある時ちょっと気分転換に作った『さなぎシリーズ』がなんとなくウケたおかげで、懐に若干の余裕ができた。
僕と結は話し合い、故郷の街で一緒に暮らし始めた。
今、結は訪問看護師として、街のあちこちを飛び回っている。
「結、いってらっしゃい!はい、これ弁当ね!」
「ありがとう駿介!いってきます!!」
何度もこちらを振り返りながら手を振る僕の小さな女王様は、涙が出るほど愛おしく、はつらつとして美しかった。
【完】
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