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〈ない、くみにはいってない〉
ないない尽くしの奇妙な少年だが、私は不思議と一緒にいて不快感を覚えない。家族以外で不快感を覚えない自分以外の人間は初めてである。正直なところ、一緒にいるだけで楽しいとさえ考えていた。
「ふーん、ぼくもわかんないね」
〈ぼく、ともだちいないんだ〉
「ぼくもおんなじ」
〈じゃ、ともだちになってよ〉
「いいよ、きみがいちばんのともだちだよ」
〈いっしょう、ともだち、きみのいちばんのともだちは、ぼくだけ。ともだち〉
すると、幼稚園バスが停車した。窓の外から見える景色は自分の家の周りの見慣れた風景。窓を見上げて私を確認する母とも目が合う。運転手の補助で乗車していたぺんぎん組の担任の先生が私を降ろしにかかる。
「おうち、ついたよー」
「あれ? このこのおうちにはいかなかったの?」
ぺんぎん組の担任の先生は幼稚園バス中を見回した。中にいる園児は私一人のみ、他には誰もいない。首を傾げながら私を母の元に送り届けるのであった。
私はバス乗り場から自宅に帰るまでの短い道中を母と手を繋ぎ歩いていた。私は「ともだち」が出来たことを話した。すると、母はその場で感涙し、膝を曲げて私と目線を合わせてきた。
年少組から年長組になるまで一切友達が出来なかった私の現状を知る母からすればこの上なく嬉しいことだっただろう。
「そう…… そう…… よかったわね。その友達、ずっと…… ずっと大事にするのよ」
「うん! わかった!」
「それで…… どこの子?」
「うーん、わかんないや」
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