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それからと言うもの、私と仲の良い「親友」は決まって災難に襲われる。彼らに話を聞いてみて共通するのは「誰かに突き飛ばされた」などと言うこと。ケガで済むものもいれば、死に至る者もいた。不謹慎な話だが、親友が怪我をして見舞いに行く際には「葬式じゃなくてよかった」と本気で思ってしまうぐらいである。小学校高学年の時の親友のトシヒコくんは…… 一緒に市民プールに行った際、溺れながら私に「誰かに足を引っ張られてる! 助けて!」と言い残した後、そのままプールの底へと沈み、若く短い命を散らしてしまった。係員による懸命のトシヒコくんへの救命活動を見ていたのだが、私はその足首にしか目がいかなかった。トシヒコくんの足首には自分と同じぐらいの手の跡がついていたからである。
私は確証こそ持てなかったものの、その手の持ち主の正体に見当がついていた。
トシヒコくんの葬式が終わった後、私は久しぶりに黒い少年と再会した。私はこれまで溜まっていたことを尋ねてしまった。
「ねぇ? 僕の友達に酷いことしてるの君?」
〈いちばんのともだちは、ぼくだけだって言ったよね? やくそくしたよね? どうしてぼくじゃない、いちばんのともだちをつくるの?〉
「一番の友達ってのはね、作るものじゃなくていつの間にかなってるものなんだ。作ってるわけじゃない」
〈だからって、ぼくがいちばんのともだちじゃなくなるのはゆるせない。きみのいちばんのともだちはぼくだけ、ぼくいがいにきみのいちばんのともだちはいらない〉
「僕に…… 一番の友達が出来たらこうやって酷いことするの? 殺しちゃうの?」
〈うん、そうだよ。ぼくのいちばんのともだちはきみだけだし、きみだってぼくがいちばんのともだちでしょ?〉
私はトシヒコくんのことは思春期の多感な時期に出会ったこともあり、生涯で一番の友達で、唯一無二の親友であると思っていた。それを喪った悲しみは海よりも深い。私は黒い少年に詰め寄った。
「ふざけんな! トシヒコくんを返せよ! トシヒコくんを殺したお前なんか友達なんかじゃない!」
〈いっしょう、ともだち、きみのいちばんのともだちは、ぼくだけ。ともだち。ってやくそくしたでしょ? だからほかにいちばんのともだちなんかいらないよね〉
「ふざけるな! 二度と出てくるな!」
〈やだ、いちばんのともだちとわかれたくない〉
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