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schwarz freund
幼稚園の頃の私はとにかく人見知りの激しい少年だった。少しだけ過去の話をするが、生まれたばかりのベビーカーに乗っての公園デビューですら、私の顔を覗き込むルーキーママの顔を見ただけで火が点いたように泣きに泣き喚き、困った母がルーキーママ達にペコリペコリと謝りながら公園を後にするぐらいだった。まだ物心も付かぬ赤子の時点でこの始末である。
家に遊びにきた親戚、叔父叔母伯父伯母祖父祖母の全員がベビーベッドの上から私の顔を覗き込んだ時点で火が点いたように泣き喚いたそうだ。
とにかく、父と母以外は接触を許さないと言った感じである。赤子であればまだ許されるが、幼稚園児ともなれば許されるはずもない。私は物心がついた頃、幼稚園に入園していたのだが、今となってはいくら形式上とは言え入園試験や面接をどうやって切り抜けたのが不思議なぐらいである。
幼稚園に入園した頃の私は生まれながらの人見知り故にとにかく他人を寄せ付けなかった。誰かに話しかけられてもプイとそっぽを向き逃げるように遠くに離れてしまう。近づかれようものなら「あっちいけ!」みたいな感じで突き飛ばして徹底的に拒絶をしていた。こうして親を呼ばれて謝った回数は多すぎて覚えていない、でも、十回はなかったと思う、これだけ繰り返せば私に近づいて来るものはいなくなるのだから。
幼稚園の先生に対しても対応は同じ、ちょっと接触しただけで癇癪を起こし泣き喚き、園内中を走り回って逃げたと言う。
幼稚園にして両親以外の人間を拒絶する。このままでは集団生活の場に入り込むことが出来ない。両親も私を児童精神科に連れて行くのだが、改善はせず。自閉症などの障碍を疑われたのだが、両親を介してのヒアリングや、人ではなく紙を相手にする知能テストでは高い水準の結果を出すことが出来た。どうやら、他人との接触を極端に避ける状態であって、障碍ではないとのことであった。
私は幼稚園に通っていても誰にも話しかけることもないし、話しかけられることもない孤独の日々を送っていたが、それをつまらないとは思わなかった。ただ、幼稚園バスに乗り、幼稚園にいる間一人で遊んで、降園時間が来れば幼稚園バスに乗って帰る。それだけの毎日を送っていた。幼稚園の年少組ならまだ分かる話だが、年長組にもなって友達が出来ないのは明らかに異常である。
今のサラリーマン生活と大差はないような気がするが…… 気にしないことにしよう。気にしたら気が滅入る。
そんな孤独の日々の中、私に初めての友達が出来た。
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