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「覚えてない? 城高で一緒だったよね。つっきーって言ったら分かる?」
「あ、分かった」
月島さんだった。髪型が違って幼さが消えているけど、性格は十年前と変わっていないようだった。
明るくて何に対しても前向き。誰とでも仲良くなれる。彼女はそんな子だ。私とは逆の性格で、同じ教室の中で少し心理的な距離を置きながら羨ましく思っていた。
偶然の再会に驚いている間に月島さんが話を進めた。
「良かった。仕事帰り?」
「そう。月島さんは?」
「私もだよ。辻ちゃん変わってないね」
「そう?」
「うん。良い意味で」
にこやかに言う。
前向きな言葉をかけてくれるのは嬉しいけど、それが消化できなかった。お世辞じゃないことは分かっているけど、素直に受け取れない。
天気のせいにして「ありがと」と答えた。
「職場、この近くなの?」
「そう」続けて訊くと、一言だけ返ってきた。「しばらく止みそうにないし、カフェにでも行く?」
「うーん……」
私は動く気になれなくて曖昧に答えた。恰好は似ていても彼女との温度差はあるままだ。
「行こう」
「分かった」
「そこは良いよって言わないと」
「そこは許してよ」
合わせて同じ言い方で返した。
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