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傘といえば月島さんが持っていたのは白と薄ピンクのストライプだった。そういうところは私より女子らしいかもしれない。
いや、女子じゃなくて女性かとぼんやり思っていると月島さんが「悲しくないよ」と言った。
「え?」
「年齢は勝手に上がってくからそれを嘆いても仕方ないっていうか……自然なことを悲しんでもなあって思うよ、私は。変わってるって言われるけど」
落ち着いた口調で話す彼女は私よりも大人に見えた。カフェラテを飲んでいる姿も余裕がある。
高校時代と変わらず前向きで、やっぱり私とは逆だ。見習いたいと思いつつ、正直な感想を返した。
「前向きだね」
「そういう辻ちゃんは後ろ向きだね」
全然楽しそうではないという。
確かに楽しくはない。大雨に足止めされて、意外な再会は嬉しいもののコンプレックスを感じる。
月島さんが悪いわけじゃないから怒るわけにもいかないし、かといって振り切って楽しむこともできない。
自分が嫌になってくるけど、それは表に出さずに「雨だし」と返した。
「晴れたら変わるの?」
「そう」
それで変われたら良いのに、と思いながら返した。
「なら、もうすぐ変わるんだ」
「どうだろうね」
適当に答えた。
「変わらない?」
「分かんない。っていうか何この会話」
流れに乗って返す間に話が妙な方向に転がり始めた。
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