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それだけではなくて、一人で雨宿りをしていたときとは違って気分が明るい。適当な会話に救われたようだった。
大袈裟な言い方だけど、偶然から始まって月島さんに助けられた。
「帰ろうか」
「うん帰ろう」
言うと、素直な一言が返ってきた。
「雨の後の空気って独特だよね。湿ってるけど気持ち悪くない」
「確かに」
微かに拭いている風には熱がありながら、どこか爽やかだった。周囲の人たちも傘を片手にほっとしているように見える。
気のせいかもしれないけど、と思いながら歩く間に駅に着いた。
構内は普段より人が多い。
「じゃあまたね」
月島さんが言った。
「また」
連絡先は交換しないで別れた。
さっきの店に時々来ているなら、いつかまた顔を合わせることがあるかもしれない。連絡を取って会うよりそれぐらい距離があるほうがいい。人付き合いについてはお互いドライだ。
次がいつになるかは運任せ。私は改札の入り口で先を行く月島さんを見送った後、時刻表を見上げた。
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