5人が本棚に入れています
本棚に追加
わたしがたばこを吸い始めたのは、小学校六年生の頃だった。
全てのきっかけは、――おばあちゃんが儚くなったこと。
儚くなったおばあちゃんは、わたしたちの住むアパートからいなくなってしまった。
その寂しさを紛らわす為に、わたしはたばこを吸うようになった。
いつも吸っているたばこの銘柄は、これ。
「花たばこ」。
淡いピンクの星型の花弁の筒状花。
吸い方は簡単。
茎の長い所をこう……煙管みたいに持つ。で、茎にそっと唇をつける。
そっと吸って、ふって吐く。
黄緑色が、鼻を抜けていくのを感じる。わたしの舌も、きっとその色に染まってるんだろうと思う。
たばこを吸う度、柔い色の花びらがそよそよと動く。
このたばこの吸い方は、大体こんな感じだった。
……わたしは、何べんも何べんも、花たばこを吸った。
おばあちゃんが儚くなっちゃった、その翌日から、ずっと吸った。
家のベランダから空を見上げながら、小学一年生の頃に買ってもらった植物図鑑の「花煙草(ニコチアナ)」がある項目のページを大きく開いて膝の上に乗せながら……何時間でも、そっ、ふっ、て吸っていた。
頭の中で、何べんも何べんも、吸っていた。
最初のコメントを投稿しよう!