花たばこを吸う、わたし。

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 わたしがたばこを吸い始めたのは、小学校六年生の頃だった。  全てのきっかけは、――おばあちゃんが儚くなったこと。  儚くなったおばあちゃんは、わたしたちの住むアパートからいなくなってしまった。  その寂しさを紛らわす為に、わたしはたばこを吸うようになった。  いつも吸っているたばこの銘柄は、これ。  「花たばこ」。  淡いピンクの星型の花弁の筒状花。  吸い方は簡単。  茎の長い所をこう……煙管みたいに持つ。で、茎にそっと唇をつける。  そっと吸って、ふって吐く。  黄緑色が、鼻を抜けていくのを感じる。わたしの舌も、きっとその色に染まってるんだろうと思う。  たばこを吸う度、柔い色の花びらがそよそよと動く。  このたばこの吸い方は、大体こんな感じだった。  ……わたしは、何べんも何べんも、花たばこを吸った。  おばあちゃんが儚くなっちゃった、その翌日から、ずっと吸った。  家のベランダから空を見上げながら、小学一年生の頃に買ってもらった植物図鑑の「花煙草(ニコチアナ)」がある項目のページを大きく開いて膝の上に乗せながら……何時間でも、そっ、ふっ、て吸っていた。  頭の中で、何べんも何べんも、吸っていた。
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