第四.五話 休憩

1/2
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ

第四.五話 休憩

「つ、疲れた」 富里の声にストップウォッチを持っていた俺は時計を見る。 11時。 あれから集中してやってたし、康介に合わせてなんかいたら二人の体力が持たないだろう。 「もう1時間半やったのか。少し休憩にするぞ」 俺がそう言えば、佐山が道路の方を見て大きく手を振った。 「ふーゆーねーえー!」 「あ、ホントだ。冬姉さんだ」 二人の言葉に道路のほうを見れば、そこには天川がいた。 こちらにヒラヒラと手を振って歩いてきている。 近くのスイミングスクールのロゴが入ったバックを持っていて髪が少し濡れているので帰りだろうか。 「仁美ちゃん、正美ちゃん……え、結貴と康介?どういうメンバー?」 「俺がききたい」 ちなみに、二人のフルネームは佐山仁美と富里正美である。 天川の疑問は同じクラスならばほぼ全員が持つだろう。 説明すると、天川は驚いた顔になる。 「康介、教えられないのに何やってるの……?」 「お前、ちょくちょくひど……」 「冬音、勝手に動くなよ!」 「既視感あるなー!」 いつだかあったようななかったような光景に康介が思わずというように声をあげる。 「榊原」 天川と同じバッグを下げて濡れた前髪をかきあげながら榊原がやって来る。 そして、俺たちを見て首を傾げた。 「三木……どういうメンバーだ、これ?」 やっぱりそうくるか。 めんどくさいなーと思っていると、富里がニヤニヤしだした。 「なんですか、お二人さん。やけに仲良さげなご様子で」 「お二人さんって結貴と柊?二人って、」 「変な方向に話持ってくなよ」 「違いますって。またまた、とぼけちゃって」 康介が忌々しそうな顔で榊原を見てるのはいつものことだとして。 富里の言葉の意図に気づく。 「冬姉、榊原と仲良さそうじゃん」 だろうな。 絶対そう来ると思った。 これはヘタに返したらイジられるやつだ。 しかし、天川と榊原は顔を見合わせて首を傾げている。 「だって幼馴染だし」 「でしょうね!……え?」 「え?」 予想外の返しに富里が困惑する。 俺も初耳だった。 佐山もそうなのか目を見開いている。 「え、お前ら知らねーの?」 唯一康介だけが知っていたのか不思議そうにこちらを見ている。 「知ってたのか?」 「まあ。俺、この二人と幼稚園同じクラスだったから」 そういうことか。 榊原が康介を微妙な顔で見てるのが気になるから後で聞こう。 富里が物珍しそうな顔をしながら頷く。 「成程。どうりで初対面の割に距離感近いと思ってたら」 「親同士が仲良くて、ゼロ歳児からの付き合いだからね。小学校は違かったし、知らない人も多いと思うよ」 「てかさ、東はなんで知ってて黙ってたん?」 「いや、言う必要もないかと……言ったら俺の黒歴史が……」 隣で集まる視線から目を逸らしてボソボソと康介がつぶやく。 地獄耳の俺にはバッチリ聞こえてるけどな。 言わないであげよう。 「まあいいや。じゃあ、私はお母さんからお使い頼まれてるから行くね」 「勝手に行って勝手にいなくなるなよ」 「あ、喉乾いたからうちも行く」 「正美ちゃん行くの?じゃあ仁美も行くわ」 「なら俺も行くか」 「結貴まで置いてくなよ!」 そうして俺たちは何故か揃って近くのショッピングモールに行くことになった。 ……いや、スポフェスの練習どこ行った? ていうか、このメンバーでショッピングモール行って誰が得する?
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!