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第五話 スポフェス・当日編
シスタークラスリレー編
「結局、練習は役に立ったのか」
「三木、顔が怖いぞ」
スポフェス当日。
俺は腕を組んでリレーが始まるのを待っていた。
徒競走は勿論康介や天川も一位だったし、他の競技も割と順調。
あとはーーリレー。
「他の日も練習したんだろ?それに学年別リレーの前に選抜のシスタークラスリレーとか三木の出る部活対抗リレーだって……」
「わかってる。わかってるけど」
俺の休日をあれだけ潰しといて変な結果は許さない。
榊原が隣で呆れたようにこちらを見ている。
「とりあえずお前は自分のことを考えろ。他はその次だ」
「……わかった」
深呼吸をして入場門の前に並ぶ。
保護者スペースのすぐ前にある入場門はリレーの出場者で賑わっている。
「おい、三木、榊原!こっちだ」
三年生の先輩がこちらに向かって手を振っているのが見えた。
そっちのほうに駆け足で行けば、シスタークラスリレーが始まるところだった。
紹介アナウンスが流れ、名前を呼んでいく。
「康介と山浦がいる限りそう簡単に負けてはこなそうだな」
「うちの学年のツートップだもんな」
康介もだが、陸上部の山浦も同じくらい速い。
クラスの女子は陸上部がいないのでバドミントン部の天川と剣道部の大宮が走る。
二人でなんで陸部いないんだよと愚痴ってたのを前にきいた。
逆に他クラスの男子は三組戦力おかしいだろと愚痴っていた。
まあ、お互いさまだ。
パンッ!
大きなお馴染みの音が響き、一年の女子が一斉に飛び出す。
応援の声が飛び交い、ワーワー大騒ぎ状態だ。
バトンがどんどん渡っていき、三組は三位だ。
「四分の一くらいの差か?」
「まあいける距離だな」
二年生のゾーンに入り、先に女子二人が走る。
愚痴ってた割には抜かして二位になっている。
僅差だったのもあるが、これは愚痴る必要があったのだろうか。
そんなことを考えているうちにバトンが男子に渡る。
次は山浦だ。
「やっぱり速いな。追い返してる」
「流石、勉強は出来なくても足は速いツートップ」
「あの速さを少し頭に分ければいいのに」
半分ぐらい周りから貶されてるのは気のせいだろうか。
バトンパスが上手くいった効果もあり、一位との距離が詰まる。
康介が目をギラギラ……キラキラさせながら一位を追い詰めていく。
「あれにだけは追われたくないな……」
「なんか背筋が冷えそう」
「怖い」
こっちもなかなかさんざんなこと言われてるな。
ちょっと可哀想になってくる。
康介はそんなことを知らず、一位を追い抜き、トップにたつとスピードをあげて三年生にバトンを繋いだ。
「三組の男子怖い……」
「一位の四組がなんかビビってた」
「三年三組もう負けらんないじゃん」
コソコソと入場門前でそんな会話がかわされる。
いや、どんだけだよ。
確かに目は怖かった。
怖かったけれども。
「三木、あれサッカー部の三年の」
「可哀想だな」
俺は不憫に思いながらゴールテープを切るまで見守っていた。
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