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彼女に会うたびにハルメスは声をかけた。 最初は、恥ずかしくてぶっきらぼうな言い方しか出来なかった。 時間が経つにつれ、言葉を交わすうちに普通に会話が出来るようになった。 ハルスは自分が王子であることを隠し、川沿いに住んでいるのだとハルメスに伝えていた。 時は流れ、雨季になった。 この国の気候は一年半に一度雨季がやってくる。 その雨季はとてつもない量の雨を振らせる。 堤防が撤廃されることはもちろん、川沿いの家など跡形も無くなってしまう。 それでも、川沿いに家を建てる人が絶えないのは、地価が安いからだ。 一年半の淡い夢を見るために建てるのだ。 雨季になり、外出も出来なくなり二人は会えない時期を過ごした。 ハルスは窓辺に張り付き町を見つめ、ハルメスはパン屋のバイトをしながらハルスが住む川沿いの心配をしていた。
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