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高山良男と落ち合う場所は、練馬の下石神井と決まっている。高山が今も勤務している新聞販売店の最寄りのファミリーレストランだ。学生店員である新聞奨学生だったころに担当した区域のすぐ近くにあるので、新聞拡張員になって以来、了介は正直なところあまりいきたくはない。新聞販売店員の業務の一つに「案内」がある。文字通り学生店員や専業店員が拡張員を連れ、多くは午後七時から九時のゴールデンアワーに、区域内の見込み客を案内して回る。建前として、店員は自分でも購読契約が取れそうな「おいしい客」の所へ連れていってはならない。しかし、了介もついそんな客を案内してしまったことが少なくなかった。
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