第2話 親友探し

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寮へ帰っている途中、声をかけられた。 「あれ?天野くんじゃない?」 振り返ると、大人っぽい女性が立っていた。 そのどこか大人びた顔は見覚えのある顔だった。 「久しぶり、覚えてる?」 そう手を振りながら近づいてくるのは、事件の発端を起こした女子生徒だった。 あれから1年がたち、彼女の容姿は大人っぽくなり、声は少し低くなっているような感じがした。 僕は顔が一気に青ざめるのがわかった。 それを隠すように、鞄に入れていた眼鏡とマスクを慌ててつける。 今更なんでそんなことをしたのか僕自身わからなかった。 でも、とても動揺していたことだけがわかった。 「…久しぶり、覚えてるよ。」 「えー、うれしー。私も覚えてるよー。」 そう言いながら、彼女は自分のスマホを操作し始めた。 「ところでさー、この写真どう思う?」 スマホの画面を見せられた僕はゾッとした。 そこには、ベンチで僕がりょうに抱きしめられていた時の写真が写っていた。 僕は必死に言い訳を考えた。 「これは、僕にまた会えたことをりょうが嬉しがってしたことで、別に変じゃない…」 顔を逸らしながら僕は答える。 その声は小さくか細く、震えている。 彼女はえー、と言いながら違う写真を僕に見せる。 「これはどう?」 それを見た僕は彼女のスマホを咄嗟に奪った。 短く悲鳴をあげた彼女を無視し、その写真を消す。 でも、それでも彼女は笑っていた。 「消しても無駄だよ。パソコンに送ってあるからさ。」 それを聞いた僕は、涙目になっていた。 震えた手も、スマホの画面も、涙で見えなくなっていた。 彼女は僕に近づいて手に持っていたスマホをすっと、取り上げる。 彼女が僕の耳元で囁く。 「まさか狩野くんまで同罪だったなんて、笑えるんだけど。」 そう言うと、彼女は立ち去ろうとした。 僕は咄嗟に呼び止めた。 彼女は少しウザそうに振り返る。 僕は震える声で言う。 「りょうは何も悪くない。僕に気を使ってくれてるだけ、僕なら何でもするから、だから…」 「なんでも?」 彼女が不敵に笑う。 「じゃあさ…」 彼女が考える。 僕はとっくに覚悟を決めていた。 彼女の表情が晴れる。 「今週の土曜日、私と付き合って。」 「え?」 そう言うと、彼女は僕にメールアドレスを書いた紙を渡してきた。 「今日中にメールくれない?もし、狩野くんに言ったら、わかってるよね?」 彼女はスタスタと去っていった。 僕は声が全く出なかった。 ただ、その場で立ちつくすことしか出来なかった。
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