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あの日以来、声がかれるほど大泣きした日が一日だけあった。
7月になって1週間経ったくらいのことだった。
家のインターホンが鳴る音が聞こえた。
配達か、また先生か、ぼーっとしていると、母が部屋をノックする。
「仁、狩野って子が来てるけど…」
そこで僕は一瞬何を言われたのかわからなかった。
僕はあの日以来りょうを忘れようとしても、忘れることが全く出来なかった。
そんなの、最初からわかっていたのに。
初恋は呪いのように付きまとう。
僕は涙をこらえ答える。
「…追い返して。」
母の足音が小さくなり、やがて聞こえなくなった。
僕はそのとき、声を押し殺しながら、泣いた。
どれだけ忘れようとしても、何度も会いたいと思ってしまう自分がいた。
もう一度、りょうと何気ない毎日を過ごしたいと思う自分がいた。
でも、それはもう二度とないということはわかっていた。
りょうの口からもう一度、あの言葉を聞くくらいなら、突き放した方がいい。
そう思った。
僕は泣き崩れた。
机の上に、大粒の涙が何度も何度も落ちる。
僕は嗚咽を漏らしながら、その場に倒れ込んだ。
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