第1話

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あの日以来、声がかれるほど大泣きした日が一日だけあった。 7月になって1週間経ったくらいのことだった。 家のインターホンが鳴る音が聞こえた。 配達か、また先生か、ぼーっとしていると、母が部屋をノックする。 「仁、狩野って子が来てるけど…」 そこで僕は一瞬何を言われたのかわからなかった。 僕はあの日以来りょうを忘れようとしても、忘れることが全く出来なかった。 そんなの、最初からわかっていたのに。 初恋は呪いのように付きまとう。 僕は涙をこらえ答える。 「…追い返して。」 母の足音が小さくなり、やがて聞こえなくなった。 僕はそのとき、声を押し殺しながら、泣いた。 どれだけ忘れようとしても、何度も会いたいと思ってしまう自分がいた。 もう一度、りょうと何気ない毎日を過ごしたいと思う自分がいた。 でも、それはもう二度とないということはわかっていた。 りょうの口からもう一度、あの言葉を聞くくらいなら、突き放した方がいい。 そう思った。 僕は泣き崩れた。 机の上に、大粒の涙が何度も何度も落ちる。 僕は嗚咽を漏らしながら、その場に倒れ込んだ。
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