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翌日から授業が始まった。
僕のクラスは比較的大人しい人が多かった。
僕も誰とも話さずに、毎日を過ごすつもりだった。
「逢坂くん。お昼一緒に食べない?」
りょう が 話しかけてきた。
お弁当を片手に持ったりょうが席の前にまで来た。
僕は戸惑っていると、机の上に置いていた僕の弁当を掴む。
そして、自分の席にふたつの弁当を置く。
「ダメかな?」
今更ダメと言っても弁当を返してくれなさそうだったので、仕方なく机をりょうの方へ移動させる。
風呂敷を広げ、弁当をだす。
りょうが弁当を開けながら、話し始めた。
「俺さ、この高校には親友を探しに来たんだ。」
僕は動揺しないように、自然に手を動かす。
りょうは話を続ける。
「俺、そいつに酷いことしちゃってさ。取り返しのつかないようなこと。酷いよな。」
そう話すりょうはどこか寂しそうだった。
「それで、そいつが行きそうな高校調べたり、そいつの母さんに聞いたりしたんだ。」
りょうがそこまでしたのかという衝撃と、まさかの母が絡んでいるということは全く知らず内心すごく驚いた。
「それも夏ぐらいに聞いた話だし、変えたんだろうな。」
僕はりょうが来てくれた日のことを思い出した。
まさか、あのとき聞いたのかと驚いた。
そのときから同じ高校への進学を考えていたとは思いもしなかった。
そこで僕はもう一度やり直せるかもしれないという思いが出てきた。
しかし、あのときのりょうの顔が忘れられなかった。
静かに話を聞いていると、りょうがいきなり右腕を掴んできた。
顔を恐る恐るあげると、真剣な表情のりょうがいた。
内心戸惑っていると、りょうが真剣な表情のまま僕の目を見て言う。
伸びきった前髪のせいで、はっきりとは見えていないと思うけど。
「お願いだ。俺と一緒にそいつを探してくれないか?」
予想もしていなかった言葉に、一瞬動揺を隠せなかった僕はただ、俯くことしか出来なかった。
断ろうとチラッとりょうの表情を見る。
しかし、それがダメだった。
真剣な表情をしているりょうの、この思いを無駄にしたくないと思ってしまった。
探している人物が自分だと言うのに。
あれだけ突き放した方がいいと何度も考えたのに、気づいたときにはもう遅かった。
無自覚に、首を縦に振っていた。
パッーと表情が明るくなったりょうが安堵のため息を漏らす。
「良かったー!手伝ってくれる人がいて助かるよー。朝からずっと声掛けてるけど誰も答えてくれなくてさぁ。」
僕はりょうの熱量に灰になってしまいそうだった。
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