第2話 親友探し

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第2話 親友探し

それから何故か、放課後に周辺の高校を回ることになった。 近くにあると言っても、電車やバスなどの交通機関を使用しての近くだ。 費用はりょうが出してくれると言ったが、それは悪いと必死に抵抗した。 それから下校中の1年生らしき人や、先生のような人に片っ端から話しかけた。 りょうは本当に必死だった。 どんなに不審がられようと、決して辞めなかった。 勿論何の成果もあげられない。 僕も言ってもいいんじゃないかと何度も思った。 しかし、あの日のことが頭にこびり付いたままだった。 そんな日が3日続いた。 3日目の何個かまわったところで、近くの公園で休むことになった。 その公園は、僕が泣き続きた場所だった。 僕は疲れ切っていたりょうのために水を自販機で買って渡した。 「ああ、ありがとう。」 僕の方が絶対に体力がないのに、りょうの方が疲れていた。 それは体力的な面と言うよりも、精神的な面だと思った。 僕は隣に座り、水を飲む。 隣を見ると、項垂れるりょうの姿がある。 りょうは笑う。 その笑いも疲れ切っていた。 りょうが顔を上げる。 「俺、そいつに酷いことしたあと、好きになったんだ。」 頭の整理が着く前に、りょうが続ける。 「多分だけど、そいつ俺のこと好きでいてくれたんだと思う。恋愛対象として。」 風の音や、周りの音が何も聞こえなかった。 ただ、りょうの声が頭に響く。 「俺さ、そのとき初めて、俺もこいつのこと好きだったんだなって、思ったんだよ。」 りょうが持っていたペットボトルを握りしめる。 「だから、もう一度やり直したい。まだ俺の事を好きでいてくれているなら恋人として、もう好きじゃなくなってたとしても親友として、やり直したい。」 僕はそのとき、初めて理解することができた。 僕とりょうが今、両思いだということを。 一気に顔が暑くなる。 マスクと伸ばした髪のおかげで、りょうには僕の表情が一切見えていなかった。 りょうは乾いた笑いをする。 「馬鹿だよな。最後までそいつの隣に行ってやれなかったのに、今更…」 「そんなことない。」 僕は初めて高校に入って声を出した。 考える前に声が出ていた。 俯いたまま、続けた。 「きっと、まだ、狩野くんのこと覚えてると思うし、狩野くんのこと待ってると思う。自分から行くのが怖いんじゃないかな。だから…」 そこまで言って、りょうに顔をあげられた。 両頬を持たれ、強制的にりょうと目が合う。 戸惑っていると、りょうにメガネとマスクを外され、前髪をあげられた。 抵抗する暇もなくあっという間のことだった。 必死に目を逸らそうとしていると、りょうが僕を抱きしめた。 「…良かった。」 臆病者の僕はりょうを抱きしめ返すことが出来なかった。 僕は周りの目が気になり、慌てたように言う。 「りょ、りょう…その…離してくれないかな…」 離す気配が全くなく、戸惑っていると、りょうが僕の肩に顔を埋めながら、小さなか細い声で言う。 「離してももう、どこにも行かない?」 りょうの声を聞き冷静になった僕は、声の出し方を思い出した。 「うん、もうどこにも行かない。」 そう言うと、りょうは僕から手を離す。 少し赤く腫れた目が瞬きをしていた。
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