SandBox

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「なあシャディ―、あんたは消えたりしないよな」 「お前が消えない限り俺も消えないよ」  髭を蓄えた体格の良い男と痩せた分厚い眼鏡の男は肩を組んで、扉の形をした光の中に消えた。その光は私が少し前に見ていたような気がする輝きと似ていると思えた。  気が付くと光の扉を前に佇む別の二人組がいる。私はそれを映像を見るかのように眺めていた。 「怖くないわけじゃないが、二人でいるなら構わないさ」 「私は最初から全然怖くないわ」 「嘘ばっかり」 「……あなたとなら怖くないわ」  お互いを信頼していることが分かる夫婦だ。まだそれほど年を取っていないように思える。二人は寄り添うようにお互いの手を握って、扉型の光へと消えていった。  これは……夢? 電子の空間に再現された人間は、その中で更に夢を見るようなことができるのだろうか。  夢の中の主観視点は自分のものとは限らない。フィルムの一場面を眺めることもあれば、自分が他の誰かを演じていることもある。物理法則さえ悪戯に踊りだし、感覚価値観までも簡単に書き換えられ、信頼を置いていた普段の彼らはどこかへ逃げ隠れてしまう。  自分が膨大な情報に飲み込まれる直前であることを解かれ行く感覚が告げた。意識はまだ夢の中よりもはっきりしている。瞬く間に過ぎ去っていった光の扉と二組の人間たちの後を無数の光球が追って行くように見えた。その光の一つを注視しようと思った瞬間に、場面空間自体が私の意識を置き去りにして切り替わった。
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