君に会う

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君に会う

「夕立興味出てきたんですか」突然後ろで声がした。でもどこか透き通った聞き覚えのある声だった。 そっと後ろを見ると白いワンピースにブラウン色の長髪の女性が立っていた。前に出会った彼女だった。 不思議そうに僕のほうを見つめられ、咄嗟に答える。 「少し気になったんです。本当に生き物なのかって」 「で、夕立は生き物だと思う?」 「結局わかりませんでした。でも生き物だとするならきっと自由に空を移動してそれはもう神のような気分なんだろうと思いましたけどね」 「きっとそうよ。大きな海を越えたり、まるで冒険家見たいな感じ!」 賛同するかのように彼女の声が大きくなる。 でも彼女が笑っている裏側に少しの哀愁が見えたのを僕は見逃さなかった。 彼女はなぜか乗り気だった。黄銅色に光るその目を乱反射させて、体を前のめりにさせながら探求の誘いをしているようだった。でも彼女との意見が一緒になって胸の部分が苦しくなったのも同じくらい不思議だった。 僕には話したいことがいくつもあった。 「もう一つ話したいことがあって、夕立の話をする前に君の名前を知りたいんだ」なぜか僕は名前が知りたかった。 「あー言ってなかったね。私は隅島(すみじま|玲子《れいこ)》よ」どこかで聞いたことがある名前だった。なぜなら自分の今持っている本に書かれている本の著者の名前だからだ。 「隅島容一郎って君の祖父だったりしない?」 「そうよ。あなたがもっているその本もおじいちゃんが書いたものよ」 大当たりだ。もしかしたらこの本がどんな意味なのか知ることができるそう僕は確信した。 「私おじいちゃんと会うはずだったの。さっきそこのベンチに座っていたみたいだけど、どこかに行ってしまったの。それで探していたら君を見つけたってわけ」僕が座っていたベンチを指を差しながらそう言った。 「チェック柄の服装だったりしない?」 彼女は驚いた顔をしながら首を縦に振った。 「なんで知ってるの?」また彼女はおもちゃを見た子供のように眼を宝石にした。 「図書館に入ってくるときに挨拶されたんだ。だからもしかしてと思ってね」 「そうだったの。そんな先に来ていたの」 なぜか彼女の顔は食いしばるように悔しさを残していた。 「一緒に探すよ。それに聞きたいことがあるし」 「ありがとう」少し照れくさそうに彼女は顔をブラウンの長髪を隠した。
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