図書館ゲーム

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図書館ゲーム

それから僕と彼女(玲子)彼女の巨大な図書館の中を探す捜査(ゲーム)が始まった。 ルールは非常に簡単で、ただ対象者となるおじいさんを探し出すことだった。 まず最初に探しに行ったのは受付だった。 人との遭遇が激しく、きっとおじいさんも歩いているうちに見つかると二人で考えたからである。 受付の前に立ち司書に問いかける。「さっきここらへんでチェック柄の服装をした老人を見ませんでしたか」 「見てませんね。色んな方が出入りなされますので、顔を完全にとは、、」 「そうですか」彼女は哀しい顔をしながら下を向いた。 「次行きましょう。きっとどこかにいますよ。置いていくはずないですから」 「そうね」 次に一階の参考書が並ぶ本棚を探した。立ち並ぶ本棚の壁に透けて通るように壁の横に立つ人を歩きながら確認していった。 僕たちは前々から階段を上りながら本棚の左右を決めておいたことで、確認はさほど苦労はしなかった。 ちょうど最後の本棚を列を確認し終わるときに、図書館の警備員らしき人が制服姿で現れた。本棚の反対側にいたらしい。僕はおじいさんの足取りを追うべく、警備員に話しかけた。 「チェック柄の服装をしたご老人を見ませんでしたか」 警備員は驚いた様子でこちらに気付いた。「えーと、チェック柄かー見てないな。人を捜しているんだったら、受付の横にあるサービスセンターに行けば探してもらうことができるから行ってみればいいさ」腰のほうに手をやって、まさにヒーローの登場のようなポーズをしていた。 「ありがとうございます」僕だけ少し一歩進んだ気持ちになった。 一階から戻る階段で僕は彼女と合流した。 「やっぱりいなかったよ」そう伝えると彼女はまた下を向く。 彼女の表情や気分も次第に低下しているようだった。 「警備員の人にサービスセンターで探してもらえるらしいからそこに行こう」 彼女におじいさんが見つかるのを願うしかなかった。
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