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プロローグ
雨が降ってきた。傘を差そう。
平凡な青い空を広々と覆って、人の心に棲んでは消えていく。
それが雨だ。
公園のベンチに座って思う。
この街は誰もが知っていて、知らない街。どうせ誰にも興味なんてない。
きっと私もその一員に違いない。
しかし雨や天気に、上を見上げる人だけは興味を示す。一体その答えを知る人なんているのだろうか。
天気といえば透明な傘に、雨を突然降らせるものがあると聞いた。
夕立とか言うらしい。黄銅色に光るとか。
思量しているうちに青い空の雨はとっくに止んでいた。
公園のベンチの目の前に広がる、突然の水溜、静かに波紋を震わせ、まさに黄銅色を強調させていた。そして水溜には誰かの足跡があった。
杖を持ったその者は何処かに行ってしまった。
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