<3・ユウカイ。Ⅱ>

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「お前を連れてきたのは、訊きたいことがあったからだ」  まだ、組織に連絡は入れていない。それよりも確認しなければならないことがあったからである。 「お前、何で俺にくっついてきた。俺がお前みたいなガキを探してるっつったな。何か知ってんのか、ええ?」  そう。彼女が超能力者の類であるか、そうでないかは別として。問題は、自分達の情報が一般人に漏れているかもしれないということである。  つまり、ロス・ユートピアが誘拐事件を起こしている、という事実。  自分がその構成員だとバレているならそれも問題だが、組織がやっている犯行がどこぞに漏れているならそれもそれで大問題だ。奴らが他にも自分のような下っ端に、誘拐の手伝いをさせていることは既に察していることである。大阪近辺で、ちょこちょこと起きている誘拐事件。恐らくうちの教団関係だろう。拉致されたであろう子供達は誰一人として見つかっていない。全員とっくに殺されている、と考えるのが筋だ。つまり、現在進行形で起きているのは大量殺人というわけである。  教団の奴らは、悪魔を食い止めるため!という正義を掲げているが。そんなもの、健常な一般人と法治国家に通用するとは到底思えない。教団の仕業だとバレたら一発で終わりだ、大量に逮捕者が出て組織は瓦解するだろう。例え耕平本人が捕まらなくても、忌々しいことにこの組織がなくなったら終わりであることに変わりはないのである。なんせ、この組織から貰っているささやかな給金で、自分はどうにか飯を食っている状態なのだから。  そして、この子供を生贄として差し出せば、さらなるボーナスが期待できる。少なくとも、当面は推しの貢ぐに十分な金を確保できることだろう。  組織の秘密がどこかから洩れていて、この娘の耳に入ったというのなら――なんとしてもその出所を確認しなければいけない。あの由羅、という少女からだろうか。でも彼女も、普通の中学生か高校生にしか見えなかった。まあそんな少女が、妹(?)が見知らぬおっさんにくっついていくのを黙認するのもおかしな話であるのだが。 「私は何でも知ってるんですよ」  少女はちょこん、と汚れた座布団の上に正座して言った。 「おじいさんが、悪いことをしようとしていることにも気づいてました。だから、止めようと思いまして」 「悪いこと?」 「良くない神様を呼び出す手伝いをしようとしてるんでしょう?それとも、存在しない神様でしょうか。どっちにしても、生贄なんてナンセンスです。今時の神様で、そんなものを喜ぶ人なんかそうそういないと思いますよ。面白がる人はいるでしょうけど」 「……どっから聴いた、その話」 「聴いたんじゃなくて、私が自分で知ったんです」  じわじわ血の気が引いていく耕平とは反対に、澪はどこまでも楽しそうである。
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