<3・ユウカイ。Ⅱ>

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「知ることができるんです、私は。あ、由羅さんは関係ないのでそこは勘違いしないように。彼女は私みたいにいろんなことを知ることができる人なんかじゃないし、ましてや私のお姉さんとかでもないので。ただ楽しいから一緒にいる、それだけなんです」  舌ったらずな声で、大人のような言葉遣いをする。しかも、あの由羅とかいう少女は血縁ではないと言った。どういう関係なのか、さっぱりわからない。いや、今はそんなことはどうでもいい。  誰かに聞いたえではなく、知った。超能力者説、の方が濃厚になったと言うべきか。勿論この少女が、超能力者ムーブをかまして、誰かに聞き及んだ話をさもサイコメトリか何かで知りましたという顔で話しているだけなのかもしれないが。 「……あのな、お嬢ちゃんよ」  頭痛がしてくる。焦りと、混乱と、あまりにも理解しがたい彼女の行動に。 「俺が、仮にお前の言う通り悪い神様?とやらの手伝いをしてたとするだろ。で、生贄を探してるってのも本当だとするだろ。……お前、自分がその生贄の筆頭になったって自覚はねーのか。俺が今、この場でお前をぶっ殺して生贄にしちまうとは思わねえのか」  勿論、自分の仕事はこの少女を家まで連れてきて、監禁しておくところまで。殺せとは命じられていない。ただこのまま彼女を家に留めて、教団に連絡を入れて引き渡せばそれでいい。  ただ、普通はそんな突飛な可能性より、別の危険を危惧するだろう。それこそ、見知らぬ幼女に声をかける中高年なんて、目撃されただけで警察を呼ばれかねない事案だ。自分が通り魔なら、いかにも弱弱しい幼女など格好の標的に他ならない。そしてロリコンならば、家に連れ込んで酷いことをするかもしれない。この聡明そうな少女が、それらの可能性を全く考慮していないとは思えないのだが。 「死ぬのは怖くないので」  一瞬、少女の眼に寂しそうな光が過った気がした。 「死ぬことより、死ねないことの方が私は嫌なので。私を誰かが殺してくれたら、それでもいいのです」 「……お前、まだ小一とか小二とかそれくらいの年だろ。何でそんな年で世界に絶望してんだよ。学校でいじめられてでもいんのか」 「そういうのではないです。絶望より、私は希望の方が嫌いです。中途半端に何かに希望を持ったら、それを奪われた時ずっと苦しい思いをする。おじいさんは、そういう経験はありませんか?そういうものが怖いから、人はいるかどうかもわからない神様に縋るし、おじいさんが所属しているようなカルトな教団が存在するのではありませんか?」 「…………」
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