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「また福ちゃんねるかよ・・・好きだな!」
「ファンだって言ったでしょ。毎日、福ちゃんの元気な声を聞いて私の一日はスタートするのよ。」
「あっそ・・・で・・・今日はどんな話さ?」
「無形資産は人生を助ける。ま、簡単に言えば、イヤなこと辛いこと苦手なことを頑張ってやってる時にこそ、自分に足りない部分が鍛えられて、その鍛えられた力こそが無形資産なのよ。」
「俺は有形資産を希望するな。だって母さんがいくら無形資産を貯えても、俺は相続できないじゃないか。」
「もう、あなたはすぐそうやって、人を茶化すんだから。とにかく、私は福ちゃんの言う通りだな・・・と思ったから、今度から毎晩、あなたが何時に帰って来ても夕食の世話をすることに決めたの。」
「そんなことしなくていいよ。別に。眠くなったら寝ればいいし、テレビ見ても風呂入っても好きにしてくれていいよ。」
「よく考えて決めたことよ。女に二言はない。なぜ、そう決めたと思う?」
「知らんよ。俺のメシ用意するのがイヤだからか?イヤだし辛いし面倒くさいけど、それを我慢して続けたら無形資産がガッパリ貯まるとでも思ったか?」
「あったり―!なんだ、バレてたか。」
「あはは・・・だって、初めに、そう説明してくれたじゃないか。」
「本当は、もっともっとイヤなことをすればいいかもしれないんだけど。母さん、年だからさぁ。今さら何か新しいことに挑戦するのは不安なんだよ。ケガでもしたら、あなたに迷惑かけるでしょ?あなたのためになって、同時に自分がツラいこと・・・って考えたら、せいぜい夕食を準備することくらいしか思いつかないのよ。ま、そういう訳だから。煩わしいかもしれないけど、あなたにとって煩わしいとしたら、あなたも無形資産が蓄積できるでしょ?一挙両得じゃないかしら・・・あはははは・・・」
「やれやれ。母さんみたいに福ちゃんに振り回されてる女性が全国に何万人もいるかと思うと・・・罪作りだよなぁ、福ちゃん!」
「あら、福ちゃんねるのファンは若い男性もたくさんいるはずよ。あなたも今度、聞いてごらんなさい。なかなかいい話するのよ!」
「俺は聞かない。どうせまた母さんは感動して、俺に話を説明するんだろう?そればかりか、母さんの生き方や俺の生活まで振り回されるんだ。」
「あなたね。口ではそう言いながら、案外、福ちゃんねるに感化されてるでしょ。わかってるのよ。この前の時間に名前をつける話だって。興味なさそうにしてたけど、私より、しっかり実践してるでしょう。」
「どうしてさ?」
「だって、あの後、私に、こう言った。『明日から俺は午後7時から8時まで走る時間に決めた。午後8時半からが夕食の時間だ。』って。ああ、コレ、完璧に洗脳されてるな・・・って、ピンときたわ。」
「ふん。そんなの普通の会話だろ。ま、いい。どうとでも思え。」
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