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やった!
私は心の中でガッツポーズをした。
1限目の数学は、先生の都合で自習になったみたい!
「ね、真由さ、今朝解禁になったMVみた?」
後ろから友達の里穂が喋りかけてくる。
「みたよ〜! かっこよかった!」
お喋りに花を咲かせる私たち!
もうみんなソワソワしちゃって、配られたプリントを真面目にしようって生徒は少ない。男子生徒の吉田なんて立ち上がってモノマネし始めちゃった。わらわらと他の男子も立ち上がって、すぐに取り巻きができる。
みんなガヤガヤして完全にフリータイムになってたんだ。
10分くらい経ったころかな。
突然大きな音が聞こえた。
-------ガラガラガラ!!
みると、鬼と謳われる体育会系の熱血教師-----鬼山が扉を開けて立っていた。
一気に教室の温度が冷えてく。
……《シーン》
そんな言葉が似合うような雰囲気になる。
あー、きっと静かにしなさいって怒られるのね。私は下を向いて、バレないようにそっと自分のスマホを机の中にしまったんだ。
「おまえたちー! うるさいぞー? 今はなんの時間だあ!?」
鬼山の鬼タイム。
怒りの爆発が炸裂した。
途端に空気を読んで吉田に群がってた男子たちは各々席へ戻っていく。
「いま自習の時間だろーう? んん? 誰が騒いでたんだ? 言ってみなさい!!!!」
最後の「言ってみなさい」だけ威嚇調子の鬼山節。耳のもみ上げがここぞとばかりに主張して見える。
「ここのクラスはいつもみんなよく出来ると担任の市山教諭は褒めてたんだぞー? それなのにその期待を裏切ってお前らはこんな騒ぎをしているのかー!? んー!?」
みんなすぐにペーパー音をさせて、カリカリとプリントにペンを走らせる。
「おい! 三田! おまえ、クラス委員だろっ!? こういうときはなぁ、お前が前に出てきちんと仕切れ! な、谷本、お前は副委員長だよな? お前も前に出ろ!! 今は良いと安閑してたら、社会に出た時苦労するんだぞ! いいかー? 社会は格差があるんだ! 平等だなんて思うなよ!? んんー? わかるか!?」
シーン。
「今は勉強する時だっ! 俺の若い頃はこんな時間の使い方をしたらぶん殴られたぞ! 頭をカチ割ったろかいっ!ってな!! 親に金を払ってもらって勉強させてもらってありがたいと思っ……」
「ちょっと、鬼山教諭」
この時、校長の声がした。
みんないっせいに見る。
「大きな声がすると思って来てみたら、なんですか? なんの騒ぎですか?」
「こ、 校長先生、いや、自習時間に騒いでたものですから、つい……」
「言葉遣いに気をつけて下さいよ。今日は、教育委員会から巡回の日だと会議でもお伝えしましたでしょ」
「ああー、すみません……あの、……」
私、大人の格差社会を見た。
[完]
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