親愛なるサクソフォン奏者へ

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親愛なるサクソフォン奏者へ

涼やかなフルートの音。 親友の奏でる芯のあるオーボエの音色。 背後から感じる重低音に押されながら わたしはサクソフォンを演奏する。 最前列に並ぶクラリネットのリズムを突き抜 けて飛んでいくトランペットの高らかな音が 舞台いっぱいに響き観客の鼓膜をも揺らす。 その音の迫力に圧倒されそうになった観客が ふと視線を逸らすと 今度はホルンやユーフォニウムの裏メロディ ーが柔らかな隠し味のようにそっと流れてい く。 一歩先を行く指揮者 隣の者がブレスを吸う音 照明の熱 観客の熱気 伝わってくる音の振動 その一体感を全身で理解しながら わたしはサクソフォンを演奏する。
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