1 スカウトされました 

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 叔母さんは、俺を無言で厨房の隅っこに連れて行った。  そして声をひそめて、真面目な声音で言う。 「カルロ、よくお聞き」 「何? 叔母さん」 「レオナルドさんにはね、きっとお前みたいな子が必要なんだよ。力になっておあげ」  叔母さんはそれだけを言うと、俺の手を握ってから、励ますように俺の目をじっと見た。  え? 俺って、何でこんなに励まされてるの。  叔母さんも叔父さんも、何か事情を知っているんだろうか。  俺は首をひねってみたが、意味がよくわからなかった。  レオナルドの息子さんって、そんなに問題児なのかな。  あの気さくそうな兄さんが、自分の子育てに苦労してるって不思議。  ともかく、向かってみることにした。  行って見なきゃ何もわからない。  当たって砕けろだ★  リュックを背負って店の外に出ると、レオナルドは車のエンジンをかけて待っていた。 「おまたせ!」  そう言って俺が助手席に乗り込む。  ドアを閉めると、エンジンがうなりをあげて、ハイスピードで車が走り出した。
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