2 貴族だなんて聞いてない

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「あのう、もしかしてレオナルドさんの家って、すごく立派ですか?」  おそるおそる聞いてみる。思わず敬語になってしまう。  レオナルドがこともなげに答えた。 「レオナルドでかまわない。私は11代続く貴族の当主をしている。本邸はローマで、ここは別邸のひとつだ」 「えぇ! 嘘ぉー!」  俺はびっくり仰天した。  じゃあこの男前兄さんって、本物の名門貴族じゃん!  そんなの全然聞いてないよ! 「そんなに驚くことか?」 「だってジーンズとか履いてるし! うちの店に食べに来るし!」 「貴族もピンキリだ。この服は趣味だ。こっちの服装の方が気楽でいい。フォーマルスーツも着るが、堅苦しいのは苦手だな」  そ、そうなの? ま、確かに俺も堅苦しいのは苦手だけどさぁ。  レオナルドが続けた。 「お前の店に食べにゆくのは、ここから一番近くて、美味いからだ。特にボロネーゼが絶品だな。うちのシェフには出せない味だ」  叔父さんが腕によりをかけてるからな。  うちの店に高い食材はないが、ボリュームなら負けません。  この人、味覚も庶民なんだなぁ…。
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