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「それじゃ、俺の来た意味がなくなっちゃうよ!」
俺が焦ったように言うと、家政婦さんは初めて、少し目元が笑った。
軽い笑いを含んで返事をする。
「まぁ、それはいかがいたしましょう。では、庭や池を散策してはいかがですか。ここの庭は名庭ですよ」
庭散策かぁ、わ、じじくさい。
ま、いっか。考えても仕方ないし。他にすることもないし。
本人が会うことを嫌がってるんじゃ、どうしようもないしね。
家政婦さんの持ってきたサンドイッチにりんご、コーヒーの朝御飯を一人で食べた。
それから玄関から出て、庭を散歩する。
庭は大きな池を中心に、糸杉やオリーブ、レモンの木、かえで、ポプラなど、緑豊かに様々な木が茂っていた。
広々とした緑の芝生には、小鳥や孔雀やウサギ、その他いろんな動物が放し飼いにされている。
日がさんさんとさして、風がよく通って……。
庭にいるうちに、落ち着かなかった気持ちが、穏やかに静まるのを感じた。
なんか、すごく平和だな……ここ。
エデンとか、天国みたい。
都会の喧騒から、切り離されたように静寂な空間だ。
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