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釣竿を振って、俺は聞いてみた。
「悪魔に会ったことがあるの?」
青年はさらりと答えた。
顔に落ちてきた金髪をかきあげながら、優しく。
「ええ、ありますよ」
あってたまるか。
ああ、やっぱり天使は、一般人と脳の回路がひとつ違うんだ……。ずば抜けて綺麗な兄さんなのに、頭がパァだなんて可哀想。
レオナルドも常識やぶりの強引さだったけど、この神父よりはマシな気がする。現実を見るという点においては。
でも俺は、座って池を眺める彼の顔がすごく虚無的で、孤独そうなのに気が付いた。
まるで一人ぼっちでさ迷って、世界と戦っているような。
この人はこの人なりに、何か心に思いつめてることでも、あるのかも……。
「今度悪魔に会ってもさ、あんた、勝てるといいね」
俺が笑ってそう言うと、彼はふと目を和ませて微笑んだ。
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