5 天使の銃弾

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 彼は真剣な表情で前庭を横切るように走っていた。彼の淡い金髪や、白い僧衣が容赦なく雨に打たれて濡れている。  俺は彼に向かって声をかけた。 「神父さん! どうしたの? 何があったの!?」  青年は俺の声に立ち止まったが、俺の方を振り向かなかった。  横顔で苦しげに、でもはっきりと言う。 「レオナルドを、撃ちました……」  え……?!  一瞬、意味が飲み込めなかった。  撃った? この人が?  ありえない。 「何で、どうして!?」  俺の質問に、神父からの答えはなかった。  俺の方を向いて、雨の中叫ぶように言う。  綺麗な眉根を寄せて、苦しげな顔で。 「私はもう、ここにはいられないんです!」  俺は瞬時に悟った。  この人は、館を去るつもりなんだ。  それっきり、帰ってこないーーーー……。  とっさに俺は自分のリュックを引っつかむと、窓の手すりを跳び越えた。  低い庭木をかきわけ、すぶ濡れの青年に向かって叫ぶ。 「俺も一緒に行く! あなたと一緒に行くよ!」
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