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彼は真剣な表情で前庭を横切るように走っていた。彼の淡い金髪や、白い僧衣が容赦なく雨に打たれて濡れている。
俺は彼に向かって声をかけた。
「神父さん! どうしたの? 何があったの!?」
青年は俺の声に立ち止まったが、俺の方を振り向かなかった。
横顔で苦しげに、でもはっきりと言う。
「レオナルドを、撃ちました……」
え……?!
一瞬、意味が飲み込めなかった。
撃った? この人が?
ありえない。
「何で、どうして!?」
俺の質問に、神父からの答えはなかった。
俺の方を向いて、雨の中叫ぶように言う。
綺麗な眉根を寄せて、苦しげな顔で。
「私はもう、ここにはいられないんです!」
俺は瞬時に悟った。
この人は、館を去るつもりなんだ。
それっきり、帰ってこないーーーー……。
とっさに俺は自分のリュックを引っつかむと、窓の手すりを跳び越えた。
低い庭木をかきわけ、すぶ濡れの青年に向かって叫ぶ。
「俺も一緒に行く! あなたと一緒に行くよ!」
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