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6 森への逃避行
外はざぁざぁと大粒の雨が降っていた。
俺たちはずぶ濡れになりながら、夜の森の中を走っていた。
行き先は知らない。
けれども地面が下ってゆくので、館のある丘を降りて街に向かっていることはわかった。
森の中を走る青年の細い背中を、俺は息を弾ませながら、必死になって追いかけた。
見失ったら、おしまいだ。
俺が聞きたいことは沢山あった。
けれども彼は黙ったまま、一言も喋らない。
どうして撃ったのかも。
どうして逃げるのかも。
けれどもその背中は迷子のようで。
俺が捕まえておかないといけないような気がした。
そのうち青年は走り疲れてきたのか、息を切らすと、歩き始めた。
そして大きな杉の木の下に、渇いた場所を見つけて座り込んだ。
黙ったまま俺もその隣に座る。地面は枯れた松の葉でふかふかしている。
青年がやっと口を開いた。
「あなたは家に帰りなさい。家族もいるんでしょう」
「やだ。俺は帰らない」
俺は首を振って頑張った。何度言われてもしつこく粘った。
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