6 森への逃避行

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   最後についに根負けしたのは、相手の方だった。  小さくため息をつかれる。 「ふう……。仕方ないですねぇ……」  むっ。まるで俺がだだっ子みたいだけど、違うんだ。  オカシイのはコイツの方だ。  人、それも親を撃って逃げるなんて、犯罪だ。 「レオナルドの命には別状はないと思います。適切な処置をすればね」 「なんで、銃なんて持ってたの?  どうして撃ったの?」 「それは、あなたには関係のないことです」  つんと拒否されて、胸が痛かった。  しばし考えた。  レオナルドは、人を撃つ性格じゃない。  この人も、人を撃ちそうにみえない。  だとすれば、事故だ。 「もしかして、自分で死ぬつもりだった?」 「………」 「その為に銃を準備していたの? それがレオナルドに見つかった?」 「あなたには関係のないことだと、言ってるでしょう……!」  叱るようにぴしりと言うと、彼は黙りこくって背を向けてしまった。その態度が、「はい」と言っていた。
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