1 スカウトされました 

4/12
17人が本棚に入れています
本棚に追加
/102ページ
 俺は不思議に思った。 「へぇ、自宅が近いのに、わざわざ店まで食べにくるんだ」 「お屋敷の食事じゃ、淋しいんだろうよ」  叔母さんは熱々の食事の盛られた器を、厨房からどんどん運び出す。  俺はその手伝いをしながら、まだ彼のことを考えていた。  ふーん。お屋敷というほどの立派な家じゃないけどな……。  ああ人気のない場所に一人で住んだら淋しいだろう。  また、来てくれるといいな。サービスするからさ。  そんなことを思いながら、俺は厨房のごみを袋にまとめた。  店の裏口を開けて、ごみ袋を抱えると外に出しに行った。  そのとき、人気のない道を歩いているレオナルドが、酔っ払いの足取りで車に向かうのが見えた。はた目にも酔っているとわかる、危なっかしい足取りだ。  あ、もしかして、酔っぱらったまま車を運転して帰る気かな。  それって飲酒運転っていうんだぞ?  いけないんだぞー。犯罪なんだぞー。  まぁ、あの緑の深い山道じゃ対向車はないから、平気だろうけどさぁ。  視線をゴミ箱に戻して、蓋をしめた時だ。  道の向こうで、男の大声で何かを問答する声が聞こえた。
/102ページ

最初のコメントを投稿しよう!