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先週の出来事
カエルの言葉に岩部は先週の朝、道路の真ん中で干からびそうになっていたカエルを近くの公園へ運んでやった事を思い出した。
「お前、あの時のカエルか」
「覚えていて下さったのですね!あの時、岩部殿に助けて頂けなかったら私は死んでいたでしょう。運んで頂けただけでも助かりましたのに、水までかけて行って下さって……!」
「そんな大げさな」
全身に負けず劣らず目を潤ませて言カエルに腰が引けながらも、岩部は先を促した。
「それで、なんだっけ。今日雨降るの?」
「左様でございます。カエルとしての本能が今日、雨が降ると告げているのでございます」
「そんな本能があるなら、なんであの時干からびかけてたんだ?」
「そ、それは……時に本能はそれを上回る本能に負けてし、ま、う……」
岩部の問い掛けにしどろもどろになっていたカエルは、言葉の途中で近くを飛んでいたハエに跳びかかっていた。
その様子に、食欲に負けたんだなと納得した。
岩部はこのままでは話が進まないと話を戻すことにした。
「でも、天気予報では晴れだったぞ」
「こと雨に関しては、人よりも我らカエル族の察知能力の方が上でございます!」
「ふ~ん。そんなもの?」
ハエを食べながら自信満々に胸を反らせるカエルに呆れたが、ふと腕の時計に目が行った。
「……て、やべぇ!こんなにのんびりしてたら遅刻する!」
問答も面倒になった岩部は慌てて傘立てから傘をとると、小走りで駆けだした。
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