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意味深な言葉
噴き出す汗をぬぐいつつも先を急ぐ。試験日でもあり、いつもより遅い時間であるからか人は少ない。
校門をくぐり間に合いそうだと足を緩めた時だった。
「岩部殿は足がお速いですね」
耳元で声が聞こえると思ったら、いつの間に肩に登ったのかあのカエルがいた。
「なんでまだいるんだ!?」
「言ったでございましょう?私は恩返しに来たのです」
「それってさっきので済んだんじゃなかったのか?」
「何をおっしゃいます!!命を救っていただいた恩返しが、ただ傘を持って行くように言っただけで終わるわけないじゃないですか!!」
「分かったから、そんなに叫ばないでくれ」
岩部はカエルの大声に立ち止まり耳を押える。カエルはしゅんとして小声で「すみません」と謝ると数度深呼吸をして気を落ち着けて喋り出した。
「とにかく岩部殿、今日は貴方様に素敵な思い出を提供できるよう私の方で計画しております。楽しみにしていてください」
それだけ言うとカエルは校庭の植え込みの方へ飛び込んで行ってしまった。
「……何する気だ、アイツ」
岩部は疑問には感じたが、カエルのすることだからたいしたことではないだろうと考えるのはやめた。
それよりも早く教室へ行こう。今日は日直だったはずだから遅れられないし、試験までに少しでも教科書の確認をしなければいけない。
気持ちを切り替えると、岩部は歩き出した。
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