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 エマヌエーレは暫くバーレに滞在する事に決め、毎日の様にエステル王女に会う事を選んだ。  彼にはこのお見合い自体を成功させる必要があるからだ。  一応表向きはお見合いとは言え実際の所、国同士のパワーバランスを考えての事、要は政略結婚に近い。  第三王子のエマヌエーレ自身、二十七歳になっても結婚もせずに独身を貫いたのには、自国の王位継承争いで兄である王太子と争いたくない為だった。  エマヌエーレはウルム王族の容姿的な特徴が強く現れ、貴族の中には王太子よりエマヌエーレを王にと言う声が今でもある...それそこエステル王女が語った将来婚姻をする相手の実家であるロンターニ公爵家がその筆頭だ。  彼はそんな連中の御輿にはなりたくは無いと軍部に入り、王太子に忠誠を誓い国境付近の部隊へ配属を希望し国を守りつづけたのだ。  それを察したエマヌエーレの父である国王は野心も持たずに独身のまま国に尽くす息子に『人並みな幸せを送って欲しいという親心』という程で隣国バーレのエステル王女のお見合いをしろ、と命じられたのだ。  バーレは小さな山岳国だが更に南にある帝国との緩衝地帯としての役割があり、出来ることなら友好関係を常に保ちたいというのが父であるウルム国王の意志だ。
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